春樹 村上 - 1Q84

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1Q84: краткое содержание, описание и аннотация

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 天吾は頭を巡らせた。しかし良い考えはひとつも湧いてこなかった。

「ひとつ質問があります」と天吾は言った。「小松さんの口ぶりからすると、戎野先生は今回の計画に全面的に加わるつもりでいるみたいに聞こえます。ペーパー?カンパニーを作ってそこの代表になることについても、既に了承しているみたいだ」

「先生はふかえりの保護者としてすべての事情を了承し、納得し、ゴーサインを出している。この前の君の話を聞いて、すぐさま戎野先生に電話をかけた。先生はもちろん俺のことを覚えていたよ。ただ天吾くんの口から、俺の人物評をあらためて聞いておきたかったようだ。君はなかなか人間観察が鋭いって感心していた。俺についていったいどんなことを先生に言ったんだ?」

「戎野先生はこの計画に加わることで、いったい何を得るのですか? お金のためにやっているとも思えませんが」

「そのとおり。この程度のはした金のために動く人物ではない」

「じゃあ、なぜこんなあぶなっかしい計画にかかわるんでしょう? 何か得るところがあるんですか?」

「それは俺にもわからん。腹の底が読み切れない人だからな」

「小松さんにも腹の底が読めないとなれば、それは相当底が深そうですね」

「まあな」と小松は言った。「見かけはそのへんの罪のないじいさんだが、実はまったく得体の知れない人だ」

「ふかえりはどこまでそのへんの事情を承知しているんですか?」

「裏側のことは何ひとつ知らないし、知る必要もない。ふかえりは戎野先生を信頼しているし、天吾くんには好意を持っている。だから君に、こうしてもう一肌脱いでいただくことになったわけだよ」

 天吾は受話器を持ち替えた。なんとか事態の進行に追いついていく必要がある。「ところで戎野先生はもう学者じゃありませんね。大学も辞めたし、本を書いたりもしていない」

「ああ、学問的なものとはきっぱり縁を切っている。優秀な学者だったが、アカデミズムの世界にはとくに未練もないみたいだ。もともと権威や組織とはそりが合わず、どちらかと言えば異端の人だった」

「今は何を職業にしているんですか?」

「株屋をやっているようだ」と小松は言った。「株屋という表現が古くさければ、投資コンサルタントだ。よそから潤沢に資金を集めて、それを動かしながら利ざやを稼ぐ。山の上にこもって、売ったり買ったりの指示を出している。おそろしく勘がいい。情報の分析にも長けていて、独自のシステムを作り上げている。最初は趣味でやっていたんだが、やがてそっちが本職になった。そういう話だ。その世界ではなかなか有名らしい。ひとつ言えるのは、金には不自由していないということだ」

「文化人類学と株とのあいだにどんな関連性があるのか、よくわかりませんね」

「一般的にはない。彼にとってはある」

「そして腹の底は読めない」

「そのとおりだ」

 天吾は指先でしばらくこめかみを押さえた。それからあきらめて言った。「僕はあさっての夕方の六時に、新宿のいつもの喫茶店でふかえりに会い、二人で来たるべき記者会見についての打ち合わせをする。それでいいわけですね」

「そういう手筈になっている」と小松は言った。「なあ天吾くん、このいっときむずかしいことは考えるな。ただ流れのままに身を任せよう。こんなのって、一生のあいだにそう何度もあることじゃないぜ。華麗なピカレスク?ロマンの世界だ。ひとつ腹をくくって、こってりとした悪の匂いを楽しもう。急流下りを楽しもう。そして滝の上から落ちるときは、一緒に派手に落ちよう」

 天吾は二日後の夕方に、新宿の喫茶店でふかえりと会った。彼女は胸のかたちがくっきりと出る薄い夏物のセーターに、細身のブルージーンズをはいていた。髪はまっすぐ長く、肌は艶やかだった。まわりの男たちがちらちらと彼女の方に目をやった。天吾はその視線を感じた。しかしふかえり自身はそんなことには気がつきもしないようだった。たしかにこんな少女が文芸誌の新人賞をとったら、ちょっとした騒ぎになるかもしれない。

 ふかえりは『空気さなぎ』が新人賞をとったことを、すでに連絡を受けて知っていた。しかしそのことでとくに喜んでいる風もなく、興奮している風もなかった。新人賞を取ろうが取るまいが、どちらでもいいことなのだ。夏を思わせるような日だったが、彼女はホット?ココアを注文した。そして両手でカップを持ち、大事そうにそれを飲んだ。記者会見があるということは知らされていなかったが、それを聞いても何の反応も示さなかった。

「記者会見というのがどんなものだかは知っているね?」

「キシャカイケン」とふかえりは反復した。

「新聞や雑誌社の記者が集まって、壇上に座った君にいろんな質問をする。写真もとられる。ひょっとしたらテレビも来るかもしれない。その受け答えは全国に報道される。十七歳の女の子が文芸誌の新人賞を取ることは珍しいし、世間的にニュースになる。選考委員が全員一致で強く推したというのも話題になっている。あまりないことだから」

「シツモンをする」とふかえりは尋ねた。

「彼らが質問をし、君がそれに返事をする」

「どんなシツモン」

「あらゆることだよ。作品について、君自身について、私生活、趣味、これからの計画。そういう質問に対する答えを、今から用意しておいた方がいいかもしれない」

「どうして」

「その方が安全だからだよ。答えにつまったり、誤解を招きそうなことを言ったりせずにすむ。ある程度準備しておいて損はない。予行演習みたいなものだ」

 ふかえりは何も言わずにココアを飲んだ。そして〈そんなものにとくに関心はないけれど、もしあなたが必要だと考えるのなら〉という目で天吾を見た。彼女の言葉よりは、彼女の目の方が時として能弁になる。少なくともより多くのセンテンスを語る。しかし目つきだけで記者会見をおこなうわけにはいかない。

 天吾は鞄から紙を取り出して広げた。そこには記者会見で想定される質問が書かれていた。天吾は前夜、長い時間をかけて知恵を絞り、それを作成したのだ。

「僕が質問するから、僕を新聞記者だと思ってそれに答えてくれる?」

 ふかえりは肯いた。

「小説はこれまでたくさん書いてきたんですか?」

「たくさん」とふかえりは答えた。

「いつごろから書き始めたんですか?」

「むかしから」

「それでいい」と天吾は言った。「短く答えればいい。余計なことは言う必要はない。それでいい。つまりアザミに代わりに書いてもらっていたということだね?」

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