春樹 村上 - 1Q84

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1Q84: краткое содержание, описание и аннотация

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 そのかわり温室には数多くの蝶が生息していた。女主人はこの広いガラス張りの部屋の中で、珍しい植物を育てることよりは、むしろ珍しい蝶を育てることにより深い関心を持っているようだった。そこにある花も、蝶が好む花蜜の豊富なものが中心になっていた。温室で蝶を飼い育てるには、尋常ではない量の配慮と知識と労力が必要とされるということだが、どこにそんな配慮がなされているのか、青豆にはさっぱりわからない。

 真夏を別にして、女主人は時おり青豆を温室に招き、そこで二人きりで話をした。ガラス張りの温室の中なら、話を誰かに立ち聞きされるおそれはない。彼女たちのあいだで交わされる会話は、どこでも大声で話せるというたぐいのものではない。また花や蝶に囲まれている方が、何かと神経が休まるということもあった。彼女の表情を見ればそれはわかった。温室の中は青豆にはいくぶん温かすぎたが、我慢できないほどではない。

 女主人は七十代半ばの小柄な女性だった。美しい白髪を短くカットしている。長袖のダンガリーのワークシャツに、クリーム色のコットンパンツをはき、汚れたテニスシューズをはいていた。白い軍手をはめて、大きな金属製のじょうろで鉢植えのひとつひとつに水をやっていた。彼女が身につけている衣服は、サイズがひとつずつ大きいものに見えたが、それでも体に心地よく馴染んでいた。青豆は彼女の姿を目にするたびに、その気取りのない自然な気品に対して、敬意のようなものを感じないわけにはいかなかった。

 戦前に華族のもとに嫁いだ、有名な財閥の娘なのだが、飾ったところやひ弱な印象はまったくなかった。戦後間もなく夫を亡くしたあと、親族の持っていた小さな投資会社の経営に参画し、株式の運用に抜きんでた才能を見せた。それは誰もが認めるように、天性の資質とも言うべきものだった。投資会社は彼女の力で急速に発展し、残された個人資産も大きく膨らんだ。彼女はそれを元手に、ほかの元華族や元皇族の所有していた都内の一等地をいくつも購入した。十年ばかり前に引退し、タイミングを見計らって持ち株を高値で売却し、さらに財産を増やした。人前に出ることを極力避けてきたせいで、世間一般にはほとんど名を知られていないが、経済界では知らないものはいない。政治の世界にも太い人脈を持っているという話だ。しかし個人的に見れば、気さくで聡明な女性だ。そして恐れというものを知らない。自分の勘を信じて、いったん心を決めるとそれを貫く。

 彼女は青豆を目にすると、じょうろを下に置き、入り口の近くにある小さな鉄製のガーデンチェアを示して、そこに座るように合図をした。青豆が指示されたところに座ると、向かいの椅子に腰を下ろした。彼女は何をするにしても、ほとんど音というものを立てなかった。森を横切っていく賢い雌狐のように。

「何か飲み物をお持ちしますか?」とタマルが尋ねた。

「温かいハーブティーを」と彼女は言った。そして青豆を見た。「あなたは?」

「同じものを」と青豆は言った。

 タマルは小さく肯いて温室を出て行った。まわりをうかがって蝶が近くにいないことを確かめてから細く扉を開け、素早く外に出て、また扉を閉めた。社交ダンスのステップを踏んでいるように。

 女主人は木綿の軍手を取り、それを夜会用の絹の手袋でも扱うように、テーブルの上に丁寧に重ねて置いた。そしてつややかな色をたたえた黒い目でまっすぐ青豆を見た。それはこれまでいろんなものを目撃してきた目だった。青豆は失礼にならない程度にその目を見返した。

「惜しい人をなくしたようね」と彼女は言った。「石油関連の世界ではなかなか名の知れた人だったらしい。まだ若いけれど、かなりの実力者だったとか」

 女主人はいつも小さな声で話をした。風がちょっと強く吹いたらかき消されてしまう程度の音量だ。だから相手はいつもしっかり耳を澄ましていなければならなかった。青豆は時々、手を伸ばしてボリュームのスイッチを右に回したいという欲求に駆られた。しかしもちろんボリューム?スイッチなんてどこにもない。だから緊張して耳を澄ましているしかなかった。

 青豆は言った。「でもその人が急にいなくなっても、見たところとくに不便もないみたいです。世界はちゃんと動いています」

 女主人は微笑んだ。「この世の中には、代わりの見つからない人というのはまずいません。どれほどの知識や能力があったとしても、そのあとがまはだいたいどこかにいるものです。もし世界が代わりの見つからない人で満ちていたとしたら、私たちはとても困ったことになってしまうでしょう。もちろん——」と彼女は付け加えた。そして強調するように右手の人差し指をまっすぐ宙に上げた。「あなたみたいな人の代わりはちょっとみつからないだろうけど」

「私の代わりはなかなかみつからないにしても、かわりの手段を見つけるのはそれほどむずかしくないでしょう」と青豆は指摘した。

 女主人は静かに青豆を見ていた。口もとに満足そうな笑みが浮かんだ。「あるいは」と彼女は言った。「でも仮にそうだとしても、私たち二人が今ここでこうして共有しているものは、そこにはおそらく見いだせないことでしょう。あなたはあなたであって、あなたでしかない。とても感謝しています。言葉では表せないほど」

 女主人は前屈みになって手を伸ばし、青豆の手の甲に重ねた。十秒ばかり彼女は手をそのままにしていた。それから手を放し、満ち足りた表情を顔に浮かべたまま、背中を後ろにそらせた。蝶がふらふらと宙をさまよってきて、彼女の青いワークシャツの肩にとまった。小さな白い蝶だった。紅色の紋がいくつも入っている。蝶は恐れることを知らないように、そこで眠り込んだ。

「あなたはおそらく、これまでこの蝶を目にしたことはないはずです」と女主人は自分の肩口をちらりと見ながら言った。その声には自負の念が微かに聞き取れた。「沖縄でも簡単には見つかりません。この蝶は一種類の花からしか栄養をとらないの。沖縄の山の中にしか咲かない特別な花からしか。この蝶を飼うには、まずその花をここに運んできて育てなくてはならない。けっこうな手間がかかります。もちろん費用もかかります」

「その蝶はずいぶんあなたになついているみたいですね」

 女主人は微笑んだ。「この<���傍点>ひと</傍点>は私のことを友だちだと思っているの」

「蝶と友だちになれるんですか?」

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